人工皮膚の研究から思わぬ恩恵がもたらされるかもしれない。ヤケド治療のために培養皮膚を研究しているスイスとスコットランドの研究チームが、胸腺の幹細胞から毛包を含んだ皮膚細胞を作り出すことに成功した。これまで培養皮膚は、毛包を含んでいないことが難点とされていたが、今回の研究はヤケドに苦しむ患者だけでなく、薄毛に悩む患者にとって朗報といえるだろう。なおこの結果は
Nature誌にも発表された。
- Irish Timesより -

幹細胞技術の最先端に取り組んでいる研究者たちは、思いがけず薄毛の治療法を発見した。
研究者たちは、ある細胞を全く別のタイプの細胞へと変えることに成功した。その過程で、毛包が機能している皮膚細胞を生み出した。
胸腺は、免疫機能をつかさどる小さな器官であるが、もともとこの胸腺の細胞を用いて研究を開始した当初は、薄毛の治療が目的ではなかった。
もともと研究者たちは、ヤケドの患者を救う方法として皮膚に胸腺細胞を移植した場合、どのように機能するのか調べることを目的としていた。
スイスとスコットランドの研究者達は、マウスによる実験で胸腺細胞が皮膚に移植したところ大きく驚くこととなった。胸腺の細胞は、自分自身がまるで胸腺の細胞であったことなど無かったかのように、健康な皮膚細胞として機能を始めたのである。
「これら胸腺細胞は、それまでの姿を変え、別の遺伝子を発現することで、より強力になるのである。」ローザンヌ大学 理工科で幹細胞研究室の主任をつとめるYann Barrandon教授はこのように語る。研究チームによる今回の成果は、Nature誌において発表された。
ヤケドの患者を治療する上で、正常に成長し機能する皮膚を作ることは、研究者達にとって長年の目標であった。培養皮膚が毛包を有していようと、あるいは有していないに関わらず、移植用の皮膚を作り出そうと苦心してきた。しかしこれまで皮膚組織は、数週間しか維持することができなかった。
今回のような、ある細胞を全く別の組織へと変化させるという新しいアプローチは、これまでより遥かに効果的といえる。この新しく作り出された皮膚組織は、毛包を含んでおり、1年間も維持された。
「胸腺細胞が正常に機能する皮膚細胞へと姿を変えたことは、非常に大きな示唆に富んでいる。」とBarrandon教授と同じチームの研究者たちは語る。
そして重要なことは、この細胞の変化の過程というのは、遺伝子操作すること無しに起きているということである。胸腺幹細胞は、移植されたことにより、移植先の部位の環境に適応することで、皮膚細胞のように機能しているようである。
今回の知見は、これらの細胞は、置かれた部位の環境に適応し他のタイプの細胞へと変化することが可能であることを示している。
「理論的には、この手順により他の臓器を作り出すことが出来る。」このようにBarrandon教授は語る。移植や再生医療の分野において有用であるこのプロセスは、皮膚の場合においてもよく機能しているが、他のタイプの組織を作り出す場合にも使うことが可能だろう。
これまでは研究者達は、ある特定の細胞が別の細胞へと変化する可能性について否定的であったが、今回の研究結果により生物学的プロセスについて新しく考え方を変える事を迫られるであろう。
■引用元
Stem cell researchers may have found baldness cure - The Irish Times - より翻訳
■いただいたご意見
こんばんは。
色々な技術が発表されていますが、正直言って私が生きている間には毛髪培養の技術は完成できないと思っています。
現在もうすぐ40近くなりますが5年後、5年後と毛髪培養が市場に登場するみないな事が言われれ続けられて何回も裏切られてきました。5年が4回言われたらそれだけで20年たってしまいます。確かに時間がかかる研究だと思いますが将来は完成すると思います。管理人様は2014年には完成するとお考えでしょうか?
ご意見ありがとうございます。20年もの間、薄毛治療のニュースに希望を裏切られたことはとても残念なことだったとお察しします。
ただこの20年の間にも技術は進み続けているのも事実です。20年前には、幹細胞もIPS細胞も存在しませんでした。クローン技術すら映画の中だけの話だったはずです。
しかしそれから20年後の2010年。それらの技術は、映画の中から現実の話となり、自らの細胞を用いることにより治療するという試みはまさに実現しようという段階に足をふみいれています。
毛髪再生医療について言えば、すでに臨床試験は行われ良好な結果を出しています。その意味で、個人的には2014年頃には商業化は開始されていくのではないかと思っています。
ニュースで心臓の幹細胞を培養して移植再生させる臨床試験が一人成功したらしいです。しかし保険適用など一般的になるには10年ほどかかるらしいです。
長いなと思いましたが心臓で10年、せめて毛髪は数年で受けれるように願いたいものです。
ご意見ありがとうございます。再生医療の心臓への応用など、開発のスピードは目覚しいものがありますね。10年後には、幹細胞による心臓治療が一般的なものになっているのかと思うと楽しみですね。
心臓の幹細胞移植で10年、髪だったらと言う考えではなく、大学病院などは、やはり命を先に救う心臓や能の治療に優先的に力を入れます。やはり髪を優先的に考える組織と言えば、金儲け重視のコマーシャルでしてる業者さん達でしょうからね。安心できるのはそうゆう業者よりも細胞に研究をとりくむ大学病院とかがいいでしょう。京都大で成果をだしたIPS細胞などを、病院は髪に対して研究するのではなく、やはり、心臓や脳を優先するわけですね。そういった意味では安心できる再生医療、培養技術が完成されるのはまだまだ先だと、考えています。
ご意見ありがとうございます。ご指摘のように再生医療の研究は命に関わる心臓や脳が優先的に進められる点は、おっしゃられるとおりですし、またそうあるべきだと思います。
ただ、今回の培養皮膚の記事のように、それらの命を救うことを優先される分野の研究結果から、毛髪再生医療に応用できるような思わぬブレイク・スルーをもたらしてくれることもあると思います。
また商業的な点について言えば、顧客を欺かないこと自体が大切だと思います。むしろ商業的なインセンティブが、毛髪再生医療を研究開発する企業間における開発競争をもたらしてくれることで、より早期の毛髪再生医療の実用化に結びついてくれれば何よりであると考えます。
否定的なコメントが多いんで不安になってしまいました。
結局細胞外マトリックスはどうなったのでしょうかね・・・
ご意見ありがとうございます。アデランスによる毛髪培養や、HSCによる毛髪再生医療が、臨床試験を行っています。良好な成果を上げているとのことなので、進捗状況を見守っていくことにしましょう。
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