毛髪と幹細胞 – hairfolliclecells.com -
2010/01/29
今回は毛髪と幹細胞をトピックにした海外サイトを見つけたので紹介させていただきたいと思います。研究開発の情報というよりは、メカニズムの解説といった内容がメインになっています。毛髪再生医療についての理解を深める上での参考にしていただければと思います。
幹細胞は全ての細胞組織に存在しており、生体組織を構築する基礎となるものである。全ての細胞は、この幹となる細胞に由来していることから、「幹細胞」という名前で呼ばれる。キャスティング・コールを待つ俳優のように、幹細胞は(特定の)組織になるために分子シグナルが送られてくるのを待っている。適切な分子シグナルを受け取ると、未分化の状態だった幹細胞は、人体に存在する200種類もの細胞へと分化していくのである。
幹細胞は高いレベルでの可塑性を持っているため、ダメージを受けた部位を取り替えたり、あるいはダメージを受けた細胞を修復のために用いることが可能である。またガンやアルツハイマー、パーキンソン病、身体の麻痺、毛髪の再生のための治療に用いることのできる可能性をひめている。
胚性幹細胞は胚から採取されるものである。胚に由来する幹細胞は倫理的な問題を含んでいる。いっぽう、誰もが自分自身の体の中にも幹細胞を持っており、これを成体幹細胞という。研究や治療においてはこの成体幹細胞を用いており、こちらは倫理的な問題は少ない。
上皮由来の幹細胞ニッチ(幹細胞を支える場所のこと)は、毛包のバルジ領域に存在しており、ここは毛包間表皮や皮脂腺とつながっている外毛根鞘部分である。毛髪は毛包の底に存在する細胞より成長する。毛包は、成長期と再成長する期間を通じて成長サイクルを形成している。研究者達は長い間、毛髪の成長をつかさどる毛包幹細胞が、このバルジ部分に存在するのではないかと考えてきた。
幹細胞はあまり活発な活動を見せない性質をもち、またバルジ体が毛髪が成長するためには距離的にはしかるべき位置にあることから、ヒトにおいてもマウスにおいても、幹細胞はバルジ体に存在するとの仮説がたてられてきた。この幹細胞が万能性をもち毛髪の成長サイクルにおいて毛包を再生しているという仮説を検証するため多くの研究がなされてきた。
細胞系譜解析の結果、バルジ体の組織が、毛髪の成長期における毛包の再生において上皮に存在する全ての細胞を生み出していることが示された。加えてこのバルジ体の組織が汗腺や表皮に寄与していることも示された。
近年において、研究者達は、バルジ体から分離した組織が、新しい毛包を生み出すことが出来る臨床上の可能性を取り上げている。CD34抗原やサイトケラチンのプロモーター活性により、毛包がバルジ体の組織により新しく生み出されたものであることを示すことが可能である。
バルジ体の組織は、細胞組織や幹細胞ニッチから採取された後も、新しく毛包を作り出す能力を保持していることが示された。しかしこれが可能なのは、表皮から採取された真皮細胞とバルジ体の組織が互いに接している状態にあるときだけである。
一般的に表皮における毛包を作り出す前駆細胞となるものはバルジ体の組織だけのように思われるが、この毛包を新しく作り出す能力はバルジ体の組織だけに限定されるわけではない。
採取された毛包周囲の細胞も実験環境下で新しく毛包を形成する能力をいくらか有している。しかし新しく毛包を形成する効率という点からいうと、バルジ体から採取した組織のほうが有意である。このことは、幹細胞を多く含んでいる組織を用いるほうが、再生医療による治療の効果をあげることが出来るということを示唆している。
さらなる研究により、他の上皮組織、培養された上皮細胞、角膜上皮や羊膜が、誘導能を持つ真皮細胞と接することにより毛包を作り出す能力を持っていることが示唆されている。
実際に、胚性幹細胞、神経幹細胞、骨髄幹細胞など多くの種類の幹細胞が、マウスの胚盤胞に誘導すると、皮膚や毛髪を生み出す能力を有している。このことは、これら以外の幹細胞であっても適切な分子シグナルさえあれば、毛包を作り出すよう分化できる可能性があることを示している。
一般的に、幹細胞は極めて柔軟な可塑性を持っている。人体の他の部分から採取した幹細胞であっても、適切な分子シグナルを与えることができれば、毛包を作り出すことが出来る。これと同様に、毛包幹細胞に適切な分子シグナルさえ与えれば、逆に他の細胞組織を作り出すことができる。当該サイトの別のページでは、毛包幹細胞を脂肪細胞や血液細胞、さらには神経細胞への分化させるといったことについて議論している。
■引用元
Hair Follicle Stem Cells and Hair Regrowthより翻訳。
■関連情報
毛のないマウスの発毛に成功――期待される人間への応用 | WIRED VISION
iN細胞:皮膚から神経細胞 iPS使わず--米マウス実験 - 毎日jp

